No.96 舌側矯正に適した歯並びとは?
2018/03/18当院のホームページには「装置が見えない舌側矯正治療」について詳細に記載しているため、舌側矯正を求めて相談に来られる患者様も少なくありません(写真1)。
舌側矯正は1970年代日本人によって開発されたもので、世界に先駆け実用化され、70年代後半には世界中にその技術が発信されました。しかし、舌側矯正治療は咬合状態や力学的な観点から、向き不向きがあるのが現状です。
「過蓋咬合=ディープバイト」と呼ばれる不正な咬合様式は舌側矯正に適していません。過蓋咬合とは上下の歯を咬合させた時に、下の前歯が全く見えない状態をいいます(写真2)。 このように、かみ合わせが深い場合、装置を裏側に付けようとすると下の前歯と装置が干渉してしまうため、装置が付けられません。また、過蓋咬合を正常咬合に戻そうとするときに、圧下力という矯正力で最も強い力を要するのですが、舌側矯正の力は弱いため圧下力がかかりません。
私が掲載している『ぷれすしーど』のコラムNo.83で紹介した、過蓋咬合をアンカースクリューを併用して舌側矯正で治した例もあるため、全てが無理というわけではありませんが、一般的に過蓋咬合を舌側矯正で治すのは至難の業でしょう。
もう一点、上下の前歯の正中線が大きくズレている場合も、舌側矯正には不向きであると言えます(写真3)。前歯の正中線がズレている場合、奥歯もズレていることが多く、そのズレを治すのに大きな力を要するからです。
舌側矯正の適応症としては、「過蓋咬合ではない事」「奥歯の位置関係が良好かつ前歯のズレがない事」です(写真4)。
これを参考に舌側矯正に興味のある方は、鏡の前で過蓋咬合ではないか?前歯の大きなズレはないか?確認してみてくださいね。