Vol.140 ボーイングエフェクトに対するリカバリー治療について
2021/11/25 歯列矯正とは、一本一本適正な位置に歯を動かして歯並びを再構築していく治療です。その動きが1次元や2次元であれば簡単ですが、3次元で歯を動かすため、理想的な歯並びにするには高度な治療技術と多くの経験が必要になります。
歯の移動において特に注意すべきポイントは前歯の後方移動です。例えば出っ歯の場合、小臼歯を抜歯し、空いたスペースに前歯を引っ張っていきます。そうすることで口元の突出感が解消されますが、牽引時にボーイングエフェクトという現象を引き起こすことがあります。
ボーイングエフェクトとは前歯部を後方に移動する際、牽引力にワイヤーが負けて前歯部がたわんで下方向に垂れ下がり、奥歯の咬み合わせも不十分になってしまう現象の事です。
経験の少ない矯正歯科医は、この現象に対する理解に乏しく、適切なアプローチができないため、そのまま治療を終了してしまうということも珍しくありません。(図2)
今回は、前歯部にアンカースクリューを埋入して、ボーイングエフェクトを抑制しながら矯正治療を進めていき、理想的な咬合状態が得られた症例をご紹介します。(図1)
- 年齢・性別
- 24歳 女性
- 治療期間
- 24ヶ月
- 抜歯
- 上下両側4番
- 治療費
- 80万円
- 治療内容
- 全顎矯正治療
- 施術の副作用(リスク)
- 歯を動かすことによる痛み、許容範囲外の歯根吸収、稀に歯髄壊死や顎関節症を引き起こす、治療後の過度な後戻りなど。